ＭＯＫＩ村の世界

神業としか言いようのない妙技を披露するサーカス団ですが、このアデリーペンギンのように何もしなくても、おっと失礼、ただヨチヨチ歩くだけで拍手喝采を浴びる天性のスターが存在するのも事実です。
ＭＯＫＩ村のパンダドンドンも、かつてそのポジションで一世を風靡してましたっけ。
彼の名はデリ。
団員の中でも珍しい出稼ぎ者で、遠い故郷に残した妻や子供達に、すっかり漁獲量の減ったイワシをクール便で送る為、一日３ステージの生活を３年も続けてきたのです。
最近家出をしてこのサーカス団にやって来たチョコ・ブラウニーをわが子のように可愛がるデリですが、そのせいですっかり里心がついてしまい、近々退団して元の郵便配達夫に戻る決心をしたようです。
聞くところによると、彼の故郷はＭＯＫＩ村のほんの目と鼻の先にあるとのこと。
チョコを一緒に連れて帰る腹積もりではないかというのが大方の予想です。

デリはセーラという人物が書いているブログの大ファンです。。
セーラとは、ＭＯＫＩ村親善大使夫人にして雑貨屋店番のあの女性のことですが、むろんデリはそんな事を知る由もありません。
セーラのブログは、さりげない日常を綴ったエッセイといった趣で、独りよがりな自己主張を感じさせることなくウィットやアイロニーがちりばめられた、大変魅力的なものなのです。
今日は北国への憧れと食文化について書かれており、デリは思わず生まれて初めてコメントというものを書き込んでしまいました。


はじめまして。
アデリーペンギンのデリです。
私は遠く故郷を離れたサーカス団で、出稼ぎ暮らしをしております。
花形スターのパンダが退団した後の穴埋めとして入団したので、芸のないのも芸のうち的なポジションでお給料をいただき、３年もの間妻子に仕送りをしてきました。
今日貴方のブログを読み、懐かしい食べ物の名前に思わず涙がこぼれそうになりました。
いえ、私の主食はイワシなんですが、近所のラッコ共がほっき貝を打ち鳴らしていたことやら、独身時代に妻が身に着けていたホタテのビキニにクラッときた事等が走馬灯のように頭の中を駆け巡り、いてもたってもいられない気分なんです。
これが、いわゆる里心というやつなんですかね？
最近入団したチョコ・ブラウニーという家出少年の村が、私の故郷とは目と鼻の先にあるそうなので、こうなったらあの子を送りがてら帰ろうと決心がつきましたよ。