ＭＯＫＩ村の世界

ドッティ・ファイファーが、そのゴージャスな毛並みと魅惑のキャットウォークでスーパーモデルのトップに登りつめた途端忽然と姿を消してしまった事件は、うつろい易いファッション業界の中でも長く語り草になったものです。
そのドッティですが、実はＭＯＫＩ村で普通のレパードとして平穏な日々を送っているのです。
幼いころから豹柄というだけで色眼鏡で見られることが嫌でたまらなかったものの、やがてその特徴を武器にモデルとして大成功を収めた彼女ですが、結局そのジレンマに耐え切れず、この辺境の地に逃げてきたのでした。
ゆったりとしたここでの生活が性にあっていたのか、ドッティはとても幸せに暮らしています。
体の模様のことで特別視されない開放感はもちろんのこと、モデル時代に我慢していたケーキやアイスクリームを今では毎日山ほど食べられるのですから。
「おかげで太ってしまったけど、だあれもそんな事気にしないしかまやしないわ」

ある日の午後、ドッティは公園を散策している時に、大変美しいアンティークの手鏡を拾いました。
この村では新参者ですから持ち主に見当もつかないので、とりあえず骨董屋のモズヤに見せに行くことにした彼女が店の扉を開けると、そこには先客がなんと４人もいたのです。
思いつめた表情のスカンクとそれに寄り添ううさぎのデイル、そして泣き出しそうなロザリーとフローラのクルス親子達の目の前で、ドッティが例の手鏡を取り出したと同時にモズヤが大きな声を上げました。
「それだ！」