ＭＯＫＩ村の世界

ドワーフうさぎのデイル・ナーシサスは、その名から連想される通り非常にナルシストなので、せっかくの美貌にもかかわらず、女の子からの人気が全くありません。
でも本人は自分以外に興味が無いので、もてなくたってちっともかまわないのです。
まあ、考えてもごらんなさい。鏡の中の己の姿が一番美しいと心底思えたら、他人に恋する気持ちなど芽生えないものなのかもしれません。
ギリシャ神話のナルキッソスは、神の怒りに触れて命を落とし、水仙の花に変えられてしまいましたが、ここＭＯＫＩ村には、いい加減な魔女はいても、嫉妬深く身勝手な神などかけらも見当たらないので、彼は思う存分自己愛に浸ることが可能なわけです。
今日は、ライス・ライターに注文していた彼自身のフィギュアを受け取りに行ったのですが、さすが工芸の魔術師との異名をとるライスだけのことはあり、そのフィギュアは完璧なまでにデイルの美しさを表現していました。
ところが、喜び勇んで家路につく途中、彼は大事な忘れ物をしていた事に気づきます。
なんと、常に肌身離さず持ち歩いているお守りの鏡をどこかに置いてきてしまったようなのです。
５分に１回は鏡を覗かないとないと気のすまない性分なので、パニック状態に陥った彼は這うようにして近くの泉へ自分の姿を映しに行ったところ、そこには彼の運命を狂わせるとんでもない出来事が待ち受けていたのでした。