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2005年10月21日 (金)

それぞれの想い

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レイン・マイヤーズは、花屋のサンダー・ソニアが土地を無償で提供している農業大学の女子大生です。
遠く親元を離れた寮生活に寂しさとストレスを感じていたレインですが、今ではルームメイトとも打ち解け、週末にはふもとのMOKI村で思いっきり羽を伸ばす事を何よりの楽しみにしているのでした。
地元の同じ年頃の娘達も交えて、ケーキをほおばりながら恋の噂やお洒落の話にいつ果てるともなく興じるのは、なんといっても若さゆえの特権なのでしょう。
テディベア族のオランジュは、目下のところ花屋のサンダーと恋の駆け引きの真っ最中ですし、ハリウッドスターを姉に持つうさぎのピンキーは、2人の男性からプロポーズされているというのに、レインときたら男の子から声をかけられたことすらありません。
「あんたはちょっと引っ込み思案過ぎるのさ」
口は悪いけど面倒見の良い姉御肌のオランジュが、いろいろアドバイスをしてくれるのですが、本当は片思いの好きな男性がいるのです。
その相手とは、MOKI村史上最高のナイスガイといわれるキング・ガーディアンなのでした。
あまりにも高望みというだけでなく、うさぎとライオンでは種族間に隔たりがありすぎるというのも、彼女の心にブレーキをかけるひとつの要因ですし、将来は家業を継いで植物栽培のスペシャリストを目指している以上、恋にうつつを抜かしている暇などありません。
告白はおろか友達に打ち明けることさえかなわないレインの恋は、ただの憧れで終わってしまうのでしょうか。
ゴゴの店のオープンテラスで二杯目のお茶をおかわりした時、ウエイトレスのパールにビリー・バニロウが近づいて来るのが目に入りました。
「これ、君に良く似合うと思って・・・」
ビリーはパールの手のひらに黄色いリボンの小箱を置くと、静かにその場を立ち去って行きます。
「ビリーの奴、見直したわ!」
オランジュ達が大騒ぎする中、レインの心で何かが弾けました。
「優しいだけのつまらない男の子に、あんな勇気があったなんて・・・」
そのかたわらで、もう一人のウエイトレスが必死に動揺を隠しています。
「ビリーの好きな娘が私の親友だったなんて・・・」
新聞社の娘リリー・ゴーライトリーは、幼馴染のビリーに対する自分の気持ちに、今初めて気づいたのでした。

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