リリー・ゴーライトリーの哀しみ
ビリーのパールへの気持ちを知ってからというもの、リリー・ゴーライトリーにいつも笑顔が見られなくなりました。
アルバイト先のゴゴの店で、休憩時間にパールが編みかけの男物のマフラーを取り出すたびに、彼女がビリーを本気で好きとは到底思えない自分が、たまらなく嫌になってくるのです。
「私の二人の親友が、お互いを好きになるなんてとても素敵なことじゃないの」
無理に明るく考えようと努めてみるのですが、八方美人のパールがビリーを傷つけるのではないかという不安を拭い去ることは出来ません。
「手編みのマフラーなんかもらったら、ビリーは本気にしちゃうわ・・・」
机の上のオルゴールを手に取り、そっと蓋を開けてみます。
遠い昔のクリスマスにビリーがくれた古いオルゴールは、彼の一番大切な宝物でした。
「あの日から、私はビリーしか見えなくなったんだもの」
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