ＭＯＫＩ村の世界

都会に子供を出すと戻ってこなくなるという現実に、悲しむ親は少なくありません。
ピンキーの母アリスン・ホールズも、姉娘のスノーがクリスマスにさえ帰郷できないと知り、すっかり落ち込んでいます。
子離れをしなくてはいけないと頭では理解しているのですが、口数の少ない夫や妹娘と過ごしていると、何でも話してくれた友達のようなスノーが懐かしくてたまらなくなる上に、ハリウッドでの娘の成功を心から喜ぶ気持ちと、失望して故郷に戻ってきてほしいという相反する複雑な思いが交錯する事に戸惑いさえ覚えているのです。

家の前のポーチでぼんやりしていると、郵便配達のデリ・バリーがダイアナ・スペンサー宅の郵便受けに手紙を入れているのが目に留まりました。
そういえば、家出したチョコ・ブラウニーが、アストレイア島にあるデリの自宅で世話になっているという噂を耳にしたばかりです。
一人ぼっちのダイアナの寂しさに思いを馳せ、気を取り直して夕飯の支度に取り掛かろうとしたとたん、明るいデリの声に呼び止められました。
「お待ちかねの手紙ですよ。」


母さんへ
私は今、ベルギーのブリュッセルに到着して、明日からの撮影に備え一休みといったところなの。
エージェントが決めた殺人的スケジュールのおかげで、クリスマスにも帰れなくてとても残念だわ。
女優になってから、世界中のいろんな場所へロケに行くけど、母さんの作るにんじんのピクルスとシュー・ジャックマンのチョコレートに勝るものは、この世にないと思うの。
今もこうして手紙に書いているだけで、すぐさま飛んで帰りたいくらいよ。
また、手紙を書くわね。

愛をこめて　　スノー


翌日アリスンは、シューの店で購入したチョコレートのギフトボックスと、１０個の特大キャニスターに詰め込んだ濃色オレンジのにんじんピクルスをスノーに送りました。