ゴーライトリー家のクリスマス
クリスマスの朝に届いた大きな荷物を見て、デルフィー・ゴーライトリーは素っ頓狂な声をあげました。
「あら大変!またゴールディーが戻ってきたのかもしれなくてよ」
以前無名時代のゴールディーが、宅配便の箱に入って帰郷したことがあるのです。
その時は、きつく叱ってすぐさまNYに帰したのですが、本当は息子の気持ちが嬉しくてたまりませんでした。
今はブロードウェーの看板俳優となった息子が、旅費を節約するためにそのような手段をとるはずもないと知りつつはやる気持ちで荷を解くと、彼女は再び大きな声で叫びました。
「まあ素敵!ゴールディーからのクリスマスプレゼントだわ」
それはたいそう豪華な雪ぞりで、シックなピンク色の車体の両サイドと前面にはバラの花が彫りこまれ、後ろはリボンと鈴で飾られていました。
「NYには、無駄遣いする金持ちが大勢いるんだな」
夫のヘンリーが苦笑いをしています。
「貴方は夢のない方ね。こんな素晴らしいそりに乗ってクリスマスを過ごせるのよ。それに、これを見たらライスやモズヤ、それにネイビーだってびっくりするに違いないわ」
早速庭に持ち出して、子供のようにそり遊びに興じる妻の様子をヘンリーは目を細めて眺めるのでした。
「君は永遠の少女だね」
そんな両親の姿を2階の窓から見つめていたリリー・ゴーライトリーは、深いため息をつきました。
美貌の一家に生まれたみそっかすの自分を恨めしく思ったことなど一度もなかったのに、ビリーへの叶わぬ恋心を自覚してからというもの、両親や兄の美しさの半分でもあればという考えが頭から離れません。
「初恋は実らないというから、パパとママは例外だったのよね」
若かりしころ出会った二人が、お互いに一目ぼれをしたという話を何度聞かされたことでしょう。
今でも充分美しいヘンリーとデルフィーですが、よく見ると体毛に白いものが交じり、読書の際は老眼鏡を取り出しています。
でも、二人の相手を思う気持ちは昔と少しも変わらず、それどころかより円熟味を増しているように見受けられます。
真面目で頭が良いけれど理屈っぽいヘンリーと、天真爛漫ながら芯の強さを持っているデルフィーは、相手の長所も欠点もひっくるめて理解し、愛し合っているのです。
「美しさだけがすべてじゃないのよね・・・」
クリスマスの朝、リリーは見失っていた自分を取り戻す決心をしました。
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コメント
おひさしぶりぶりでした(*^_^*)
あら。コレちょーかわいい♪
パソコンが新しくなったので、画面がとってもよくなったので、
momoukiさんちの子たちが とってもきれいに鮮明に見れるようになりました♪らっきー(^_^)v
投稿: yun | 2005年12月 5日 (月) 19時36分
yunさま~
本当に無事で良かった~
それに、やっぱりyunさまのコメント嬉しい!!!
投稿: momouki | 2005年12月 5日 (月) 20時52分