トリッキー少年のクリスマス
ハロウィン生まれのトリッキー・クリッキーは、サンタクロースに変わったお願いをしました。
それは、クリスマスに魔法使いサンドラを自宅に招きたいという、突拍子もない要望でした。
キキモラのかけた魔法を解くために大活躍したことからサンドラと知り合えたものの、あやかしの森に訪ねていくのは大変危険です。
そこで、プレゼントの代わりに彼女を招待するというアイディアを思いつくとは、ある意味とても彼らしいと言えるかもしれません。
サンタのハリー・ベリーもこれにはすっかり感心して、思わずサンタ笑いの「ホ~ホ~ホ~」を演技抜きで連発したほどでした。
クリスマスの朝、ほうきに乗ってやって来たサンドラと一緒にディナーを食べた後、思いがけずもらったプレゼントを開けたトリッキーは、真新しいスケッチブックと魔法の絵の具を試すために、早速子供部屋にかけこみました。
その絵の具とは、混ぜて複雑な色合いを作らなくても、心に描いた色がその通りに表現出来るとても不思議なものでしたが、もちろん色彩感覚や絵心の優れた者でないと使いこなすのは難しいのです。
一方、居間ではトリッキーの母リアンが、複雑な表情でサンドラと話をしていました。
「なぜ、あのようなものをトリッキーにくださったの?」
リアンは、我が子を魔法使いにさせる気持ちなど毛頭ないことや、絵を描くために外の世界を放浪している夫デニスへの気苦労を語り、いずれにしても画材を息子に渡したサンドラの行為は迷惑であるときっぱり告げたのです。
するとサンドラがこう答えました。
「彼を魔法使いの後継者にするつもりなどないから安心おし。MOKI村の偉大な魔法使いは、すでに決まっているのさ。」
「うちの子じゃないならいったい誰なの?」
「それをあんたに喋るわけにはいかないよ。それから絵の具の件だが、あの子は芸術の神に愛されている。父親と同じ轍を踏む事を恐れて、子供の可能性を阻止するのはどうかと思うがね。」
それだけ言うと、サンドラはほうきにまたがり北の空に消えてしまいました。
残されたリアンは、新たな心配の種が出来たことでいてもたってもおられず、ノックもしないで子供部屋に入ると、トリッキーが描いた魂を揺さぶられる様な風景画の前で、しばし呆然と立ちつくすのでした。
クリッキー家の外では、キキモラが一部始終を見ていました。
悪戯の許しを請うために用意していたプレゼントを渡したくて、サンドラの後をつけていたのです。
話し声は聞き取れなかったものの、人付き合いの苦手なサンドラがトリッキーとクリスマス・ディナーを共にし、魔法の絵の具まで与えたということは、魔法使いの後継者として自分を差し置き彼を選んだに違いありません。
心の中でどす黒い憎悪の炎がめらめらと燃え上がっていきます。
キキモラは、ライス・ライターが作ったピンク色の猫の置物を地面に思いっきり叩きつけて、粉々に砕いてしまいました。
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コメント
クリスマス~ の雰囲気はやっぱりいいですよね。
昨日ラーメンの帰りに(笑)に行った雑貨屋さんで、クリスマスグッズをやはり買っちゃいました♪
イルミネーションで飾っている家も増えてきて、わきみ運転になってしまい、怖い今日この頃です。
サンタ笑い「ホ~ホ~ホ~」 ちょっと想像しちゃいました。(^_^)v
投稿: yun | 2005年12月 7日 (水) 13時14分
yunさま
そうです~。
出かけるたびに小物を買ってしまいます。
それが、いわゆるクリスマス商戦の効果なんでしょうね(#^.^#)
ところで、今年のイルミネーションは、今までよりシックなものが多いような気がしませんか?
投稿: momouki | 2005年12月 7日 (水) 13時50分